新橋ハート対談

今回の対談のお相手:南永樹さん
 11月7~8日に東京で開催される「立ち呑みの日」の企画運営者。
 本職はSPディレクター)
対談場所:新橋STANDINGBAR ORYO
(※「立ちのみ竜馬」は13年前はORYOの場所で経営していました。)
聞き手:砂押資(立ち飲み 竜馬 オーナー)

砂押:今日は激務の中ありがとうございます。
ここ(現在のORYO所在地)で竜馬をやっている時にお越しくださったことがありますよね?


:何度もあります!だから懐かしいです。砂押さんが奥にいましたね。


砂押:おれ、南さんのこと、すっごい覚えてるんですよね。お背が高くて。すぐただものじゃないのはわかりました。


:俺 水っぽいですもんね(笑)


砂押:いえいえ、そんな(笑) 同業者さんの偵察かなと思ってたんですよ。でも実際立ち飲みの店をプロデュースされてたんですよね?


:そうですね。 ライクア 竜馬さんでやってました。


砂押:いえいえ。
  では(ギネスビールで)乾杯!


砂押:「立ち呑みの日」の準備として各店舗との調整が大変なんじゃないですか?


:そうですね。
200店舗弱を一店一店まわってるんですよ。
ポスターを来週から貼るんですけど、それを見て加盟してくださるお店さんもあるんですよ。


砂押:締切おわってからでも加盟をお受けになってるんですか?


:はい。ガイドマップには印刷できませんけどまだWEBではご紹介するんです。
素敵なお店を紹介するのが仕事ですから。


砂押:「立ち呑みの日」をはじめたきっかけはどんなものなんですか?


:立石で手がけた立ち飲み屋にいた時に、発起人のライターさんである藤原氏がお客様でいたんです。
その方と2人で「立ち呑みの日」のイベントをやろうよって洒落ではじめたんです。
最初はたったの6軒からです。完全に洒落だったから「立ち呑みの日」の開催の2週間まえにツイッターでつぶやいただけだったんです。そしたら驚いたことに200~300人ものお客様がきてくれちゃったんです。


砂押:へえ~。すごい!南さん、ツイッターにどれだけのフォロアーがいるんですか?


:お酒関係のブロガーさんたちがみんなで一斉に発信してくれたんですよ。
それが予想を超える手ごたえがあったんです!立石が観光地みたいになってました。
「気になるお店でワンコインで一杯飲む」というキーワードを面白がってくれたようです。
ほんとに洒落ではじめただけだったんですけど一緒にはじめた藤原さんが「南さん、もっと展開しなよ」って言って下さったので やることにはしたんです。


砂押:立石での成功が土台になって全国展開になったんですね。


:いえいえ、東京です(笑)。
でもたったの6軒ではじめたのを急に100軒にするなんて、どうしていいかわからなかったですよ。


砂押:ところで、急にそんなにお客様がいらしてお店は対応できました?


:できなかったんですよ。
だから「やっぱり疲れるし、儲からなかったから」といっておやめになったお店さんもありました。
でも1回目はどのお店もてんてこ舞いだけど、2回目はだいたいの様子がわかるので、今度は自分のところの顧客様になってもらうチャンスにできると思うんです。
本来はお越しにならないお客様にご来店してもらって自分達の魅力を試してもらえるってすっごい機会だと思うんです。


砂押:プレゼンのチャンスですからね。そういう意識があればこの企画を活用できるでしょうね。
南さんが「立ち呑みの日」を続けるのはどうしてなんですか?


:立ち飲み屋って、混んで来たらつめて譲り合ったり、嫌いじゃないけど今日は一緒に飲みたくない相手とか、酔ってちょっとメンドくさくなっちゃったりしてる人がいたら、じゃ次いこうか、って軽くお店変えたりできて、2軒3軒はしごしたりしますよね。気軽で非常に面白い。そいういう軽い感じがすごい好きなんです。そういう軽い飲み方を知らないんだったら、教えてあげたなあと。
うちに籠ってないで、もっともっと軽い感覚でいいから、人と触れ合おうよ、って。
それ楽しいですから!


砂押:なるほど。
実は 南さんに「立ち呑みの日」のお話をいただいて、正直やられたなとやられちゃったな~という悔しい気持ちもありました。


:そうですか?


砂押:そうですよ~。
でもここは一緒に足並みそろえないといけないと思いました。
だって自分はこれからも立ち飲みやっていくわけで、ならば全国的に「立ち呑みの日」はあったほうがいいと思って参加しました。自分達に見返りあるし。
ご参加店舗の皆さん、そんな気持ちで参加してるんじゃないですか?


:難しいですね~。
僕がほんとうにこれからどうしようかと思ってるときに「やりましょう、南さん」と砂押さんに後押ししていただいたから、今はこうなっていますが。でもやっぱり反発する方もいらっしゃいます。


砂押:いるんですか?だっていいことばっかりじゃないですか。


:ほんとのところはどうしてなのか、わからないですけど、誤解されたりもしてますよ。


砂押:お店ってお客様に知ってもらわなきゃしょうがないじゃないですか。どんなにテクニックがあって、いい素材を使って作ってうまいものだそうと、まずはお客様に知ってもらわないと砂漠で店やってるのと一緒なんですよ。
自分がどれくらい素晴らしいことやってるかはお客様に来てもらわないと自己満足に終わってしまいますよね。だからそういった意味で「立ち呑みの日」とか活用すればいいんですよね。「立ち呑みの日」の売り上げを最優先するんじゃなく、へんな話、当日儲かんなくても、最大のプレゼンの日だと捉えればいいですね。


:俺の考えてること全部、言葉にしてくれてますね。


砂押:ところで、「立ち呑みの日」に来たお客さんが気にいるお店って一言で表すとどういうお店なんでしょう?


:「ホスピタリティ」ですね。
お客様は黙っていても店の良し悪しを匂いで感じてます。


砂押:ところで、ホスピタリティってなんですかね?南さんの考えがききたいな。


:具体的に言うと、「余計なことをしない」


砂押:おおおおおおおおおおおお!
いつどうしてそんなふうに思ったんですか?


:それはね、実は自分がそうなりたいなと思うけど、自分がなれないから。


砂押:え?余計なことしちゃうんですか?


:するんですよ~。ぼくけっこう人が好きなんで、隣に人がいたら話しかけるし、余計なこと話すし、だからその反面教師なんですよ。まだまだ勉強中です。


砂押:バーテンダーとかってそうかなって思うんですよね。基本、話しかけられるまでは話さない。ぼく、こっちが求めてないのにべらべら話すバーテンダーって嫌いなんですよ。
竜馬ってそのスタンスでやってますね。だから10年通ってくれてるのにお名前も知らないお客様とかいらっしゃいますよ。目で合図するだけ、みたいな。


砂押:さて、「立ち呑みの日」の着地点は?


:社会貢献とかそんなんじゃないんです。ただノリで、それなりにみんなに喜んでもらえたのでいまこういう形になりました。 わたしのイベントではないというのが最大のポイントですね。
6店舗からはじめて、去年はスキーム構築で、実は今年が第一回目の感覚なんですよ。来年には自分の手から離れて「立ち呑みの日」が独り歩きしていきますから、それを見ようかなと。ひとそれぞれの形があるんでそれを見守ろうと思ってます。


砂押:ぼく、13年前から変わらずいまでも思ってるんですけど どうして、立ち飲みがはやったかって、ただの飲食だけでなく、デジタルな感じじゃなく、南さんのおっしゃるリアルコミュニケーションという付加価値があったから流行ったんだと思うんです。逆に立ち飲みでリアルコミュニケーションがなかったお店はただの食堂になっていて、だいたい評価の高いお店ではない、もしくは評価されないお店ですね。


:そうですね。


砂押:このカウンターの中からお客さんをみてると、「ザ・新橋のおじさん!」みたいな人が 普段はとうてい話しかけても相手にされないようなOLや 自分の娘みたいな子と世間話で盛り上がってる、それは会社でも家でもなくて。立ち飲みという特殊な空間だからできるんですよね。そういう面白みが立ち飲みの受けた部分だと。
飲み屋で出会って結婚するとかっていうのも 座ってのむというのではなかなか、ありえないのかもしれないですね。


:ほんとですよね。位置きまってますからね!


砂押:そうなんですよ。立ち飲みって毎日が立食パーティみたいでしょ。そこでビジネスに繋がる人脈とか、お友達の輪が広がっていく。やはりコミュニケーションの場なんですよね。そういう付加価値があったから、人間関係が希薄な時代にあったのかもしれないし、そしてお金のない時代に安く飲めるというのもあったし、それと、お店側の話からすれば、小投資で独立できる、未経験からでも独立できる。そういった要素があいまって立ち飲み屋が増えたんだと思うんですよね。


:角打ちみたいなところでお爺さんがやってて、なんかよくわかんないもの飲んでっていう立ち飲みばっかりだったところに、安いからいいだろう?じゃなくて、安くてもおいしくなきゃダメでしょって、やっぱりいろんな感覚が、砂押さんが今の新しい立ち飲みを創りあげたんですね。


砂押:ありがとうございます。
ところで南さんはなぜ立ち飲みをやったのですか?


:10年前に立ち飲みやろうとして、いろいろとリサーチしてたんです。
そのなかで 正直に竜馬さんが気に入ったんです。
ご夫妻お二人で安い値段でやられててね。それにお客さんが非常によかったんです。
(お店がうなぎの寝床のような形状のため)リレーみたいな形でお料理とか飲み物とか運んでくれて。混んでてお店の中には入れないですけど、外で飲んでる皆さんがどうぞどうぞって仲間にいれてくれて。
それはご夫婦がビジネスとしてじゃなくて生業としてやられてるからなんじゃないかと思いました。
それがすごく良くて 家内に立ち飲みやりたいって言ってみたら「遊んでていいから余計なことをしないで、じっとしてて」って言われて断念した(笑!)、そんないきさつがあったんです。


というのは、僕はSPディレクターで 直接企業からお金をもらうお仕事をしていたんです。
そうすると、自分自身がどこの位置にいるのかがわからなくなってしまって。
エンドユーザーさんのことをもっとわかりたかったんですね。
それから7年以上たったときに、友達が立ち飲み屋をやることになったので一緒に立ち上げました。
はじめは立ち上げだけやったら2か月でやめるつもりだったんです。
でもお店に愛着が湧いちゃって結局半年お店に立っちゃったんです。
恥ずかしながらフードも作って。ほとんど9割砂押さんのぱくりですけど。


砂押:いやいやいやいや。


:ほんとですよ。
もうライクア竜馬ですから。
非常に面白かったです。ダイレクトにお客様が喜んでくれるのを見れる商売っていいですよね。


砂押:いいですね。
ぼくも自分のやったことがいいのか悪いのかすぐにジャッジが欲しいんですよね。
お客様の前になにか一本はさむと途端にわかんなくなるんですよ。


:そうなんですよね。


砂押:ぼく、竜馬をやる前は中古車屋の営業マンをしていて、商売の知識とかなにもなくてお店を始めたんです。だから完全にお客さんからの観点でこの値段だったら楽しいだろうという観点から値段設定をしました。
普通なら、利益を考えて値段をつけるのに、完全にお客さんの観点だけから値付けしてしまったものだから実際経営の面からいうと大変だったんですよ。


:そうですか。じゃあ、竜馬さんを雛形にしてたら僕も大変だったんですね。


砂押:きっと奥さんに切れられてたと思いますよ~。
ほんとに最悪でした。
とは言っても実は僕はブランドを作るまで3.4年は投資の時代だとも思ってたんです。
そう思ってても 立ち飲みブームがくるまでは、ほんとに大変だったんですよ。
でもお客様が喜んでくれてて毎日がとにかく楽しかった。楽しくやってたらブームがきて。
そしてお客様がもっといっぱい来てくださった。
でも内情は大変で。・・・僕をマネしてお店をだした方は大変だったと思いますよ。


:まるで僕のことじゃないですか!
当時 角打ちみたいなところにお爺さんがいてっていう立ち飲みばっかりでしたけどね。
それが砂押さんが「安いからいいだろうじゃなくて、おいしくなきゃ」っていう感覚をもちこんだ。やっぱり砂押さんが今の新しい立ち飲みを造りあげたんですね。


砂押:ありがとうございます。そういって戴けると励みになります。


:砂押さんが立ち飲みにこだわる理由って?


砂押:ぼく庶民的なのが好きなんですよね。
ワンカップとか飲んでるのが好きなんですよ。だからと言って飲める場所がどこでもいいとか、きたないとかはいやなんです。


:それはやっぱりかっこいいですよね。僕すごいそこわかります。
ここはわかってるんだけど、わざと着崩す、みたいな。そこの粋な感じですよね。オシャレだけどオシャレすぎない。


砂押:ぼくは明日またもう一日生きるために酒を飲んでるんだ、みたいな人達と接していたい。そのひとたちに癒しを与えたい。


:ROCK !!ですね~!


砂押:ファッションで立ち飲むとか、お金をこだわってないよって人には、もっともっとちゃんとした形で癒しを与えたいんですよね。


:もらうんならもっと徹底的にやるってことですね。
僕もその気持ちわかります。
僕 地元なので子供のころから知っている立石の有名な某もつやき屋とかは、今でこそ昼からサラリーマンが並んでますけど、もともとは働く人のための店なんです。
昼から飲んでるのはもともとは現場の職人なんです。朝5時から起きて仕事にいくけど、雨が降ると仕事が終わってしまうんですよ。お店はアーケードの中にあるので 雨になると、その職人が行くところがなくて飲み屋に来るんですよ。もつ焼き屋は彼らが飲むためにやってる。働く人のためにあるんです。
やっぱり働く人のための居心地のいい場所なんです。


砂押:そうですよね。そもそも立ち飲みのルーツって、江戸時代末期くらいまでさかのぼって、お城を建てる職人さんのためにできたらしいんです。
でもね、ファッションとしての立ち飲みはいやだって、そうはいってもね、28歳で開業したとき、この立ち飲みの楽しさは若い人に浸透させたかったんですよね。その当時っていわゆる煙もくもくの、このひとたち何をやってる人たちなんだろうっていう人たちの、お店で。でもそれがすごいおもしろくて、でも若いひとはいなくて。だからその面白さを若いひとにおしえたくて。


:主食は缶詰、みたいなね。


砂押:そうですね。でも、いくら安いからってそういうお店には行けないって人のための立ち飲み。そういうのをやりたかったんですよ。
だから値段設定は立ち飲み価格だけど、その雰囲気とかはいわゆるこじゃれた形。女性や若い方々が入れる雰囲気にすることによって立ち飲み屋のお客さまの間口を広げたくて。
それと、普段からいい酒を知ってる、例えばマッカランをバーで飲んだら一杯いくらかを知ってる人たちが、立って飲むだけで、こんな安い値段で飲めるんだって喜んでくれるようなお店。要するに違いがわかるひとたちがおもしろくなっちゃう。テンション高くなっちゃうようなものを狙ってたんです。


:素晴らしいマーケッターですね。
砂押さんは、まず生業としてやっていて、そのあとに商人(アキンド)なんですね。
そこが素晴らしいんですよね。


砂押:ありがとうございます。
立ち飲み屋を経営するひとはね、基本おれはせこいよって人には向いてないかもしれない。
逆にどんぶり勘定ぐらいの勢いのひとのほうが向いてるかもしれないですね。


:そうですよね。


砂押:立ち飲み屋っていまゴマンとありますけど、これは座りの店でも一緒ですけど、まずはお店を知ってもらわなきゃしょうがないじゃないですか。知ってもらうには投資が必要で、客よせパンダ、目玉が必要で、そういう部分が絶対大事で、今の時代とくに飲食ではそこをけちったら難しいと思ってて。
とにかく知ってもらって来てもらう。
自分がどれくらい素晴らしいことやってるかはお客様に来てもらわないとわかってもらえない。そこの順番がわかってない人が意外といる。
自己満足で終わってしまう経営者。だからもったいないと思いますね。そこに結局アキンド、まあいやらしさがないと実はだめですよね。
一生懸命修行してきたうまいもの出してればお客様がきてくれると思ってる人がいるんですよ、でもそんな甘い世界じゃないですから。


:美味しいものを安く出せれば、って思ってますよね。
そしてそこそこ生活できてればそれでいいんだと、おれの店なんだからって。
でもそれも基本マーケティングがあって成り立つものですからね。


砂押:だからそういった意味で「立ち呑みの日」とか活用すればいいんですよね。「立ち呑みの日」当日の売り上げを最優先するんじゃなく、へんな話、その日 儲からなくても、最大のプレゼンの日だと捉えたらいいですね。


砂押:長い時間どうもありがとうございました。
・・・お次、どうします?


:・・・どこかへ行きますか?


砂押&南:じゃ行きましょう!


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